営業のカンとはなにか。
今回は、このよくわからない「営業のカン(直感)」について、そのとらえ方や必要性、身につけかたを解説します。
勘と聞くと、
なにそれー?令和の時代にカンで仕事することってあるー?
なんて思うかもしれませんが、特に営業職においては最も重要な必須スキルといえます。
カンを軽視するのは、的外れなことなのです。
例えば、電卓やパソコンがある時代に九九覚える必要ある?って疑問に思うようなものなのです。
営業のカンとは、仮説設定のこと
営業業務の特性上、日々様々な取捨選択や優先順位をつけています。つまり、判断をしているわけです。
無駄がなく成績も優秀な方は例外なくこの判断力が高いのです。
では、なにをもとに判断をしているのでしょうか。
それは、情報でありデータであり経験なのです。
しかし、同じデータや経験があっても誤った判断をする人っていませんか?
そうです。判断するまでのプロセスがそこに介在するのです。
このプロセスには、さまざま要素がありますが、第一に挙げることが「仮説と検証のプロセス」なのです。
つまり、よく言われる「カンのいい営業パーソン」とは、仮説設定の品質が高いということなのです。
仮説と検証とは
営業活動とは、常に仮説と検証の繰り返しをしているといえます。
別の記事で説明しましたが、お客が購入するのは現状と理想のギャップ、つまり課題を埋めるために商材を購入するわけです。
ヒアリングにあたって、顧客は当然ながらすべて言語化して課題を言ってくれるわけではありません。
営業パーソンは、少ない情報でも課題とその解決策を提示する必要があるわけです。
ヒアリング→課題抽出→提案→修正提案、という流れになります。
カンが悪い営業パーソンは、仮説の精度が低いために、この課題抽出が粗いあるいはズレます。結果、提案の的がハズれ、修正する無駄な工数が生じているのです。
工数増ならまだ救いはありますが、失注や顧客の信頼度が低下することになったら目も当てられません。
なお、この仮説設定の精度のメリットは提案活動に限りません。
販売計画や商材の選定、ターゲッティング等々全方面に反映されるものです。
状況の掌握と分析
仮説設定をより深堀りすると、
情報の収集→状況の掌握→分析となります。
まず始めに、情報が必要になるわけですが、当然ながら非言語の情報も含まれています。
人のしぐさや表情、声の状態などパーソナルなものや、企業組織の雰囲気や空間も含めて大切な情報となります。
次に、バラバラの状態である情報を分類し状況を把握します。
その分類された要素を個別に分析するわけです。
営業における分析はやはりSWOT分析が一般的です。
仮説設定の精度を高める方法
仮説精度を高める考え方
営業の中でもマーケットイン型で進める際に、特に有効な思考になるわけです。
プロダクトアウト型で進める場合は、結論から導き出す理由付けとしてこの思考を活用することになるでしょう。
また、商材の導入事例がある場合はそのパターンも参考になります。
もし参考になる事例などの情報がない場合は、一度導き出した仮説を全力で否定してください。
次に、その否定したことに対する事柄に、さらに反論します。
その反論がより精度の高い仮説となるはずです。
場数を踏むことの重要性
用語やテクニックを学ぶことは、体系化して考えることができるのですが、当然ながら経験を積む以外に習得することはできません。
企業を訪問する際、企業ホームページや与信情報などで事前に情報を得ていると思います。
しかし訪問すると「イメージと違った。」なんてこともありますよね。この感覚が非常に大切です。
そして、何にどう違いを感じたのか。どこに違和感を覚えたのか。
ということを具体的に考えることが訓練になります。
慣れてくると、受付(電話含む)の対応や雰囲気の情報だけで、
どのような企業なのかわかるようになります。
それは、経営や組織における志向性やポテンシャルを含めた状況などのことです。
つまり、五感で情報を収集することを習慣化してほしいのです。
そこで得た情報を過去の経験や引き出しやパターンと突き合わせて、生じた差分を新たな引き出しとしてストックします。
そうすることで、次第に仮説設定の労力が軽減していくわけです。
なお、優秀な営業パーソンは記憶力が優れています。事細かに記憶しているものです。観察力が秀でているともいえます。
蓄積した知見をメモなどに記録することは有効ですが、仮説設定するための情報を記憶しておくことをおすすめします。
顧客へ提案し検証する
全力で導き出した仮説によって作成した提案を顧客へぶつけましょう。
よほどの大掛かりな案件出ない限り、提案するのは双方のリスクはありません。
提案が刺さらなかったら、そのポイントの洗い出しと修正を繰り返せばいいのです。そこに自身の成長がありますし、顧客は熱意と捉えることかと思います。
提案は一定のセオリーがあります。
ここでは詳しく述べませんが、
よりシンプルにわかりやすく、代替案や創造的提案も有効でしょう。必ずしも常識にとらわれる必要はありません。
それは顧客の志向性や予算と効果の度合いによりますが、いずれにしても現実的かつ自社が選ばれることが前提となります。
注意したい点
よく、提案したいといってアポ入れし、自社の商材を説明して帰ってくるやつがいます。
顧客は、商材には興味ありません。個人消費において顕著な所有欲というのも、本質的ではありません。
顧客は、商材をとおして得られる利点にお金を支払うわけです。
限られた時間の中では、案件の規模によって注力に差が生じます。
しかし、その自己本位の姿勢に顧客は敏感です。
また、顧客側の案件に対する熱量に合わせる必要もあるでしょう。
改めて伝えたいこと
営業職における仮説と検証の考え方とその実施方法について語りましたが、つまりは「考えよう」「想像しよう」ということを強調したいわけです。
様々な顧客の個別の事情において、課題の解決策を見出す行為は自身の洞察力をも磨き鍛えられます。
ゴールはひとつでも、それまでの過程には多くの分岐がありその数も
プロセスに正解はないのです。しかも、相手は競合他社といった外部要因も加味した上で、すすめるわけですから難易度の高い業務といえます。
しかし、正解がないからこそ、そこに自身の存在価値を見出すことができ、失敗も含めて面白い仕事といえるのではないでしょうか。