顧客との関係性はとても大切です。
別の記事で顧客ロイヤリティについてお話ししましたが、商談をより優位に円滑に進めるためにはこのポイントをおさえる必要があります。
よりよい関係性を継続していく、つまり最終的に信頼される決め手は、誠実に向き合うことです。
基本的な顧客との関係性
本質的には対等である
発注者である顧客は、受注者である営業側よりは立場が強いことはいうまでもありません。
よく勘違いされるのは、上下関係ではないということです。
自社において上長とは上下関係といえましょうが、
顧客は外部の人間であることから立場が強いパートナーと捉えることが妥当です。
顧客の事情を知る
顧客が選ぶポイントは、価格・品質・納期などの商材面だけに留まりません。
営業パーソンは、いかにして値下げを回避して選んでもらうか工夫する必要があるわけです。つまりは差別化をどうするかです。
では、商材以外に差別化を図る点はなにか?
顧客の担当者心理としては、絶対に失敗したくないという強い欲求があります。
もし、担当者が導入を決めた商材に何らかのトラブルが生じ、営業パーソンやその企業の対応が悪かったらどうでしょうか?
受注者側は当然ながら、担当者もその企業内での評判が下がるのです。
つまり、顧客は買い切りではなく持続的なフォローを求めているのです。
営業パーソンにとってのゴールが受注であり導入時であるとする一方で、顧客担当者にとってのゴールは導入時ではない点にギャップが生じているのです。
導入時をゴールとしたストーリーではなく、運用においても継続的にサポートする体制のコミットを求められていることを意識しコンペに臨む必要があります。
それをイメージしてもらうことも差別化の基本的な考え方です。
御用聞きにはならないこと
むかしの失敗談ですが、仕入れたパソコンを売ったことがありました。
それは、顧客の担当者が指定した海外ブランドの安価な製品です。
納品して間もなくトラブルが多発したのです。
ロット不良か否かの回答も満足に得られないまま、修理しては様子をみる状況がつづきました。
そんな中、その海外メーカーは日本市場から撤退したのです。
日本において修理拠点をもつ別の海外メーカーに引き継がれましたが、労力を要した記憶があります。
トラブルを解消してくれたと顧客の担当者から評価されたとはいえ、
顧客内ではどうしても「あの営業(企業)が導入した」となります。やがて、顧客の担当者からも「どうしてこれを売ったの?」となるわけです。
不安要素は臆せず指摘することも信頼関係を長期的に維持する上では重要なポイントです。
期待値の設定
とはいえ、自社商材などは特に売らなければならないときがあります。
これは企業人である以上避けられない命題です。
購入後のトラブルを避けるには期待値設定することをおすすめします。この期待値の設定を誤るとクレームや苦情になり、さらに対応が杜撰であれば信頼関係どころではなく法的措置に発展することも珍しくありません。
極端な例を紹介すると、100円ショップで購入した傘が数回の使用で柄が折れた場合に感じる印象は「まあこんなもんか」です。一方で、1万円で購入した傘が2か月後に柄が折れたらどうでしょうか?「え?なんで?」となるのです。
長年にわたって良好な関係を保っている営業パーソンは、例外なくこの感覚で顧客に情報を共有しています。
しかし、注意が必要なのは企業の機密情報と捉えられる表現はさけることを補足しておきます。また、関係性に応じてNDAをかわすことも有効です。
顧客体験(CX)がない新規の場合
商材や企業の知名度がないスタートアップ企業において、
新規開拓するために顧客が判別する部分の大半は人です。
経営者や営業パーソンの経歴や志向性や人柄などの情報をもとに、
顧客側も仮説を立案するわけです。
したがって、営業パーソンはどう見られているか、あるいはどう見せるかを意識する必要があります。
しかし、顧客側も数多くの商談実績があるため、しばらくは様子を見られることでしょう。
新規受注には一定の訪問回数が求められ、疑似的に顧客体験を重ねた末に信頼関係の構築が成立するのです。
営業パーソンが陥りやすい点
商談では主導権を握れ
要望を聞くことを重視するあまり、顧客側の希望をなんとしても実現するんだと息巻いて取り組むことはありません。
よく、お客に振り回されるということを聞いたことがあるかと思います。
顧客の課題を理想の状態にするゴールは一つなわけです。
そして、そこへのプロセスにおいて、選択肢を用意し選んでもらうのが基本的な提案の流れです。
しかし、顧客は一度選択した提案内容でもブレることがよくあります。
営業パーソンは、この顧客のブレる意見を本筋に戻すなど、常に案件をリードする意識が非常に大切です。
自身だけが対応するのなら致し方ない場合はあるものの、
事務や技術者、仕入れ先などが絡む場合は慎重になる必要があります。
また、最終的には顧客からも頼りないといった印象を持たれます。
さらに補足すると、顧客担当者の中には取引業者に貸しを作りたくないと考える方もいます。
このパターンでいえば、負担だけさせて発注しないこともあります。
いいとこどりをするな
営業パーソンが主導権を握ることは先に述べました。
それは、交渉はビジネスですから有利になるようすすめることは基本です。
しかし、営業パーソン側の都合だけを考慮するのはおすすめしません。それによって交渉は成立し取引開始しても、
ゼロサムの関係は一時的なもので決して長く続かないからです。
顧客の課題を満たすのに5つの案件が生じる際、
自社の都合だけを考えて3案件のみ受注できるようすすめたとします。
顧客は、残りの2案件はほかに相談しなければならないわけです。
あらかじめできない案件を明示することは重要ですが、
関連する業者に相談するなど、営業パーソンの姿勢を顧客はみています。
ワンストップで対応できると顧客側の負担も軽減し評価されます。
あくまでも、顧客側はビジネスパートナーとして取引する価値はあるかどうかを見定めているのが実情です。
要注意な顧客(こういう顧客はいやだ)
私が経験した数千社の顧客と取引した中でいえる、注意が必要な顧客担当者や取引しないほうがよい会社があります。
共通して言えることは、大事な事柄において不誠実でルーズだという点です。
トラブルに対して受注前にするべきことは、ほかの業者からの評判や企業内での担当者の情報を取得しておくことをおすすめします。
あとであれこれと要求する顧客担当者
価格交渉含めてスムーズに商談を終えて受注する前後に、
追加の要望をしてくる顧客担当者がたまにいます。
営業にとって、受注確度が高くなるにつれその案件の希少性が増します。
当初聞いていた内容との乖離が多いため受けられないと毅然とした対応ができれば済む話ではありますが、見込み案件が少ない状態では決して手放したくないわけです。
経験豊富かつズルい顧客担当者は、わきがあまい営業パーソンのスキを見逃しません。
「〇〇がついかで必要になった」「費用は別途請求してください」と、誠実に要望するならまだよいとしても、「伝えてなかったかな?」などと、不利な事情をあとから知らされるパターンで自主的な対応を暗に要求するパターンがあります。
少なくとも案件には、不測の事態がつきものとはいえ事前に解消しておきたいものです。
また、無用なトラブルを防ぐ上でも、顧客側と責任分界点を明確にしておくことをおすすめします。
契約書や覚書きをかわせればよいのですが、口頭だけではなくメールなどの文書で記録にのこる方法でやり取りするとよいでしょう。
顧客担当者が頻繁にかわる
数か月から5年以上要するものと期間は様々ですが、当年度内に受注できる案件が多いです。
窓口となる顧客担当者がたまたまの異動で交代することもよくあります。幸いなことにやりやすくなる場合もありますし、その逆も然りです。企業向けにビジネスをする場合、当然やむを得ないことです。
しかし、中には1年の間に数回も担当者が交替する企業があります。退職したり異動したりと事情は異なるとしてもそれは営業パーソンとしては厄介なことです。
改めて人間関係を構築することに加えて、引継ぎの不備による認識相違や要件の変更などが生じることも少なくありません。
こうした企業の共通点として、いくつかの事情が散見されます。
・その企業にとって案件の優先順位が低い
・人材確保がままならなく組織改編ばかりしている
・そもそも取引業者を軽視している
対策としては、より上位役職者であるキーパーソンに接触することが一番はやいです。
導入後のサポートにやたらと手間がかかる
導入研修などは当然の役割ですが、実運用のサポートは自社オフィスメンバーが対応することになります。
「この顧客はサポートが大変だ」とか「申し出が高圧的だ」などとオフィスメンバーから苦情が寄せられる場合があります。
商材の改良や業務フローの改善に役立つことと捉えられる一方で、
こうしたやっかいな顧客は社内のリソースを圧迫します。
営業パーソンは受注して役割が終了するわけではなく、
結果的に面倒な顧客を取り込んだとして、自社から対応を求められます。
こうした企業は少なくなっていますが、やはり小規模かつ従業員満足度が低い顧客に多く見られる傾向があります。
ここで言いたいことは、「顧客を教育すること」で「顧客を教育するのは営業パーソンの役割」という点です。